皮膚炎にはいろいろな種類があります。アトピー性皮膚炎は30歳までで10%前後、40歳代では4%、50歳から60歳では2%の人がかかっている一番多い皮膚炎です。その他の皮膚炎として接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん:毛孔からでる脂漏によってできる皮膚炎です)、単純性痒疹(たんじゅんせいようしん:むしさされ)などがあります。

白人では10%前後のひとで発生することから、詳しい研究が行われています。しかし、日本人ではまれな皮膚炎として扱われており、正確な発症率や患者さんの数を調査したものはありません。

【酒さ皮膚炎】

酒さ皮膚炎の初期は日焼けやストレス、寒暖差、飲酒等で顔が赤くなってチクチクする状態です。これは酒さの前駆症状(ぜんくしょうじょう)ともよばれており、一般的に起こる顔面の変化と変わりがありません。

日本人の場合にはステロイド剤の長期使用によって起こるものがほとんどです。「今日の治療指針2017年版」では酒皶様皮膚炎の原因はステロイデドの外用剤の長期使用によって起こる病気と記載されています。皮膚科学会のガイドラインでは「尋常性痤瘡(じんじょうせいざそう:にきびのこと)治療ガイドライン2017」の中で治療法の記載がありますが、痤瘡に関しては47項目あるのに対して、酒さに関しては4項目しかありません。しかも研究の数が少ないことが影響して、推奨度はC1止まりのものばかりです。

<参考:エビデンスレベルと推奨度>

エビデンスレベルという言葉はその疾患に治療薬の研究がどれほど進んでいるかを示す分類のことでⅠからⅥまでに分類されています。
Ⅰ:システマテックレビュー(複数のランダム化比較試験の内容を吟味して紹介した論文)、あるいはメタアナリシス(複数のランダム化比較試験のデータを統合して効果を統計的に推定すること)がある。
Ⅱ:1つ以上のランダム化比較試験の文献が存在する。
Ⅲ:非ランダム化比較試験
Ⅳ:疫学的な研究論文がある。疫学(えきがく)には過去の病気の発生に何らかの原因がある事を統計的な手法を用いて検出する後ろ向きの疫学とある時点から観察を続けて何らかの原因が病気の発生に関係しているかどうかを統計学的に明らかにするものです。
Ⅴ:記述研究(ひとりの患者さんで効果があったという報告)や症例集積研究(一つの病院で患者さんのデータを遡って集計した報告)
Ⅵ:専門委員会や専門家個人の意見
数字が低いほどエビデンスレベルが高いことになります。

推奨度はエビデンスレベルを考慮して次のように分類されています。
A:強く推奨する
A*:効果はAと同様であるが、副作用が多いなどを推奨度が劣る。
B:行うことを推奨する(質の劣るエビデンスレベルII、質のいいエビデンスレベルIII、非常に優れたエビデンスレベルIV)
C1:選択肢の一つとしては推奨できる
C2:十分な根拠がないことから(現時点では)推奨しない
D:行うべきではない

【酒さ性皮膚炎の危険度】

刺激をうけた顔面の皮膚が赤くなってチクチクするのが酒さ性皮膚炎の前駆症状とされていますが、すべての人が酒さ性皮膚炎に進行するわけではありません。

原因は免疫、皮膚細菌叢、細菌などが仮説として上がっていますが、確実にこれだということは証明できていません。

治療は免疫の過剰反応に対する免疫抑制剤の使用や、皮膚細菌叢の改善のための特定の抗生物質の内服や細菌に対して抗生物質の外用などが使われています。しかしながら酒さ皮膚炎の数が少ないことから効果に対するしっかりとしたエビデンスはありません。その他の治療としては漢方薬や乳酸菌や乳酸菌のえさになるものが試験的に用いられています。

酒さ皮膚炎は大人ニキビとよばれるものが出ることがあります。この状態で皮膚科を受診することをお勧めします。

大人ニキビが広がって、最悪の段階になると鼻の横に瘤(こぶ)ができます。之に関しては外科的に切除するほかに治療法は見つかっていません。

【外用ステロイドと酒さ性皮膚炎】

外用ステロイドは薬局でも手に入れることができます。しかし、虫刺されなど原因が分かっている炎症に短期間使うことを心がける必要があります。

顔のかゆみに漫然と外用ステロイドを用いていると酒さ皮膚炎が発症する場合があります。この場合には外用ステロイドはすぐにやめなくてはいけません。外用ステロイドをやめると顔の痛みや発疹が一時的に増えることがあるので、外用ステロイドをもう一度使いたくなりますが、酒さ性皮膚炎が悪化すると前述のとおり外科手術が必要となります。

市販の外用ステロイドを用いていて異常を感じた場合には、その外用ステロイド剤を購入した薬局の薬剤師さんに相談してもいいですが、まず皮膚科を受診することをお勧めします。薬剤師さんも同じことをいう場合が多いからです。

【まとめ】

日本人の酒さのほとんどは外用ステロイドの使用がほとんどです。薬局で外用ステロイドを購入する場合には、原因がはっきりしている炎症に、短期間使うように注意する必要があります。

【参考資料】

アトピー性皮膚炎Q&A ―コメディカルの患者指導のためにー(2017年6月28日参照)

日本皮膚科学会ガイドライン
尋常性痤瘡ガイドライン2017 (2017年6月28日参照)

今日の治療指針2017年版 第20章皮膚科疾患 酒皶様皮膚炎
(医学書院 2017年1月1日発行)